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低リン血性くる病・骨軟化症の診療について、専門医がわかりやすく解説していきます。

【治療編】家族性低リン血症性くる病の治療

PART1の診断編では、「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」を紹介し、診断のポイントについて解説いただきました。PART2では家族性低リン血症性くる病の治療について、症例をまじえながら実践的に解説いただきます。

本記事に掲載する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、すべての症例が同様な結果を示すわけではありません。

解説1 基本的な治療

経口リン酸製剤と活性型ビタミンD製剤を併用

 家族性低リン血症性くる病は、責任遺伝子の違いによっていくつかの病型に分けられます(家族性低リン血性くる病について>病態の表2参照)。これらのうちHHRH以外の病型では、主にFGF23高値による腎近位尿細管におけるリン再吸収障害と1,25(OH)2D濃度低下に起因する低リン血症を示し、治療の基本は経口リン酸製剤と活性型ビタミンD製剤の併用となります。一方、HHRHではFGF23は低値となり、ビタミンDの活性化障害を伴わないため、経口リン酸製剤のみを投与します。
 成長期の治療目標は骨変形と成人身長の改善であり、小児患者では診断時から成長終了まで継続的な薬物治療が必要になることが多く、低年齢での治療開始が望ましいとされます。一方、成人患者では疼痛の緩和、骨軟化症の改善、骨折治癒や手術後の回復などを治療目標として薬物治療が行われ、自覚症状の改善などに一定の効果があるとされます1,2)

治療中のモニタリング

 薬物治療の副作用として、ビタミンD過剰による高カルシウム血症や高カルシウム尿症、リン過剰による2次性副甲状腺機能亢進症などがあげられます1~3)。治療中は副作用の発現を最小限にするためにも、検査値などのモニタリングが必要です。血清リン値、血清カルシウム値、血清PTH値、血清ALP値、尿中Ca/Cr値を2~3ヵ月ごとにモニタリングし、投与量を調節します。また、腎石灰化のモニタリングのため、腎エコーを1~2年ごとに行います。
 治療の短期的な指標としては、主に血清ALP値が用いられます。家族性低リン血症性くる病ではすべての病型で血清ALP値の上昇が認められます3,4)。ただし、血清ALPの正常値は年齢により異なるので注意が必要です。これらに加え、くる病変化の改善・悪化の評価などを目的として、上下肢の単純X線像を半年~1年ごとに撮影します。また、身長の増加速度も重要な指標です。

その他の治療法

 家族性低リン血症性くる病に対するその他の治療として、成長ホルモン(GH)分泌不全症を合併した場合、低身長に対し、GH補充療法を併用する場合があります。また、薬物治療で改善しない重症例や内服コンプライアンスの悪い症例における重度のO脚や脛骨捻転に対しては骨切り術が行われることもあります。このほか、歯科合併症予防のために、口腔衛生を保つと共に定期的な歯科受診が必要となります1)
 なお、現在行われている治療は対症療法となりますが、近年はFGF23に対する中和抗体療法などの新規治療法の開発も進んでいます。

参考文献
1)原田大輔、難波範行:CLINICAL CALCIUM, 26(2), 91-98, 2016
2)大薗恵一:THE BONE, 22(6), 63-67, 2008
3)Carpenter TO et al: J Bone Miner Res, 26(7), 1381-1388, 2011
4)木下香、皆川真規:小児内科, 40(11), 1786-1791,2008

POINT

  • 治療の基本は経口リン酸製剤と活性型ビタミンD製剤の併用
  • 副作用の発現を最小限にするため、2~3ヵ月ごとに検査値をモニタリングし、投与量を調節するほか、腎石灰化のモニタリングのため、腎エコーを1~2年ごとに行う
  • 治療の短期的な指標としては、主に血清ALP値が用いられる。また、くる病変化の評価などを目的として、上下肢の単純X線像を半年~1年ごとに撮影する

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