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家族性低リン血性くる病について

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家族性低リン血性くる病について

臨床症状・診断

1歳前後から臨床症状が認められる

低リン血症は出生後早期からみられることもありますが、臨床症状がみられるのは1歳前後からで、O脚(図1)・X脚などの骨変形、歩行開始の遅れ、転びやすいなどの歩行障害、低身長等の主訴があります。また、歯膿瘍がしばしば認められます。
図1:O脚(提供:大阪大学大学院医学系研究科 内科系臨床医学 情報統合医学講座 小児科学 教授大薗 恵一 先生)
▲ 図1:O脚
(提供:大阪大学大学院医学系研究科 小児科学 教授
大薗 恵一 先生)

単純X線検査および検査所見から診断

単純X線検査
くる病性変化は軟骨内骨化が最も活発な骨幹端中央部に顕著に現れ、これによって骨幹端の杯状変化(カッピング)(図2)、骨端辺縁の不整(フレアリング)および不鮮明化、毛羽立ち(フレイング)などが認められます。
図2:くる病の単純X線写真(提供:大阪大学大学院医学系研究科 内科系臨床医学 情報統合医学講座 小児科学 教授 大薗 恵一 先生)
▲ 図2:くる病の単純X線写真
(提供:大阪大学大学院医学系研究科 小児科学 教授
大薗 恵一 先生)
血液・尿検査
血清ALP値
家族性低リン血性くる病4つの病型すべてにおいて血清ALP値の上昇が認められます。
血清リン値、尿中リン排泄
血清リン値は低値を示します。小児は成人より血清リン値が高く、血清リン値の判定の際には年齢を考慮します。また、食事などによる日内変動も大きいため、判定する際には採血条件にも注意する必要があります。
また、尿中へのリン過剰排泄が認められ、リン再吸収率(%TRP) ※1 低下ないしは尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR) ※2 低下をもって判断します。

  1. ※1:%TRP=[1-(血清クレアチニン×尿中リン) / (血清リン×尿中クレアチニン)]×100
  2. ※2:TmP/GFRはWaltonとBijvoetのノモグラムから求められる。
血清カルシウム値
血清カルシウム値は正常で推移し、低カルシウム血症がある場合はビタミンDの作用不全によるくる病を疑います(表1)

▼ 表1:X連鎖性低リン血性くる病(XLH)とビタミンDの作用不全によるくる病との鑑別

図1:O脚(提供:大阪大学大学院医学系研究科 内科系臨床医学 情報統合医学講座 小児科学 教授大薗 恵一 先生)

岡崎 亮:CLINICAL CALCIUM, 17(10),1543,2007 より改変
*北中 幸子:CLINICAL CALCIUM, 20(8),1238,2010

血清PTH値
血清PTH値は正常で推移します。
血清ビタミンD代謝物
25(OH)Dは正常を推移します。25(OH)Dの測定は現状では保険適応外ですが、ビタミンD欠乏症との鑑別に有用です。1,25(OH)2DはX連鎖性低リン血性くる病(XLH)、常染色体優性低リン血性くる病(ADHR)および常染色体劣性低リン血性くる病(ARHR)では正常または低値を示し、高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血性くる病(HHRH)では高値を示します。
血清FGF(線維芽細胞増殖因子:Fibroblast Growth Factor)23値
血清FGF23値はXLH、ADHRおよびARHRでは高値を示しますが、Fanconi症候群やビタミンD欠乏症では低値を示します。また、HHRHでは正常~低値を推移します。測定は25(OH)Dと同様に現状では保険適応外です。

2015年4月、日本内分泌学会、日本骨代謝学会により「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」が発表されました。くる病、骨軟化症それぞれの診断指針と、その解説が掲載されています。
「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」については、本サイトの「くる病診察室 【診断編】」もご参照ください。


治療

治療の基本は経口リン酸製剤と活性型ビタミンD製剤の併用

リン欠乏に対して経口リン酸製剤を投与します。さらに、腎臓におけるFGF23高値によるビタミンDの活性化障害が認められるため、活性型ビタミンD製剤を投与します。投与量は、ビタミンD過剰による高カルシウム血症および高カルシウム尿症とリン過剰による2次性副甲状腺機能亢進症をきたさないように調節します。なお、HHRHではビタミンDは正常に活性化されるため、経口リン酸製剤のみで治療します。
成長が続いている間は投薬中止によりくる病の再発、成長障害をきたすため、治療は継続します。また、家族性低リン血性くる病は一般的に2歳までに診断することが可能であり、乳児期から十分に加療された症例では成長、臨床症状、画像・検査所見のいずれも治療開始が遅れた症例にくらべて良好な結果が得られています。下肢変形が強い場合は整形外科的治療を行います。

検査値をモニタリングして投与量などを調節

治療中は副作用の発現を最小限にするためにも、検査値などのモニタリングが必要です。
血清リン値、血清カルシウム値、血清PTH値、血清ALP値、尿中Ca/Cr値等を2~3ヵ月ごとにモニタリングします。さらに、腎石灰化のモニタリングのため、腎エコーを定期的に行います。これらのモニタリングなどの結果をもとに治療を調節します(表2)

▼ 表2:治療中の問題と原因、治療の調節

問題点 原 因 治療の調節
活性型ビタミンD製剤 経口リン酸製剤
下痢、血便、腹痛 経口リン酸製剤過剰
X線所見の改善不良 内服不良、治療量不足
軽度の高Ca血症(12mg/
dL以下)と高Ca尿症
活性型ビタミンD過剰 → or ↑
高度の高Ca血症(12mg/
dL以上)と高Ca尿症
ビタミンD過剰 検査値改善まで中断 検査値改善まで中断
高Ca尿症 ビタミンD過剰 → or ↑
腎石灰化 ビタミンD、
経口リン酸製剤過剰
検査値改善まで中断 検査値改善まで中断
2次性副甲状腺機能亢進 ビタミンDに比し
経口リン酸製剤過剰

Baroncelli GI, et al:Pediatr Endocrinol Rev, 1(4), 361, 2004 より改変

合併症の予防

歯科合併症の予防のため、口腔衛生を保つと共に定期的に歯科受診します。また、腎石灰化を合併する可能性があるため、水分摂取を心がけるよう、指導します。

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