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▼ 表1:X連鎖性低リン血性くる病(XLH)とビタミンDの作用不全によるくる病との鑑別
岡崎 亮:CLINICAL CALCIUM, 17(10),1543,2007 より改変
*北中 幸子:CLINICAL CALCIUM, 20(8),1238,2010
2015年4月、日本内分泌学会、日本骨代謝学会により「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」が発表されました。くる病、骨軟化症それぞれの診断指針と、その解説が掲載されています。
「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」については、本サイトの「くる病診察室 【診断編】」もご参照ください。
リン欠乏に対して経口リン酸製剤を投与します。さらに、腎臓におけるFGF23高値によるビタミンDの活性化障害が認められるため、活性型ビタミンD製剤を投与します。投与量は、ビタミンD過剰による高カルシウム血症および高カルシウム尿症とリン過剰による2次性副甲状腺機能亢進症をきたさないように調節します。なお、HHRHではビタミンDは正常に活性化されるため、経口リン酸製剤のみで治療します。
成長が続いている間は投薬中止によりくる病の再発、成長障害をきたすため、治療は継続します。また、家族性低リン血性くる病は一般的に2歳までに診断することが可能であり、乳児期から十分に加療された症例では成長、臨床症状、画像・検査所見のいずれも治療開始が遅れた症例にくらべて良好な結果が得られています。下肢変形が強い場合は整形外科的治療を行います。
治療中は副作用の発現を最小限にするためにも、検査値などのモニタリングが必要です。
血清リン値、血清カルシウム値、血清PTH値、血清ALP値、尿中Ca/Cr値等を2~3ヵ月ごとにモニタリングします。さらに、腎石灰化のモニタリングのため、腎エコーを定期的に行います。これらのモニタリングなどの結果をもとに治療を調節します(表2)。
▼ 表2:治療中の問題と原因、治療の調節
問題点 | 原 因 | 治療の調節 | |
---|---|---|---|
活性型ビタミンD製剤 | 経口リン酸製剤 | ||
下痢、血便、腹痛 | 経口リン酸製剤過剰 | → | ↓ |
X線所見の改善不良 | 内服不良、治療量不足 | ↑ | ↑ |
軽度の高Ca血症(12mg/ dL以下)と高Ca尿症 |
活性型ビタミンD過剰 | ↓ | → or ↑ |
高度の高Ca血症(12mg/ dL以上)と高Ca尿症 |
ビタミンD過剰 | 検査値改善まで中断 | 検査値改善まで中断 |
高Ca尿症 | ビタミンD過剰 | ↓ | → or ↑ |
腎石灰化 | ビタミンD、 経口リン酸製剤過剰 |
検査値改善まで中断 | 検査値改善まで中断 |
2次性副甲状腺機能亢進 | ビタミンDに比し 経口リン酸製剤過剰 |
↑ | ↓ |
Baroncelli GI, et al:Pediatr Endocrinol Rev, 1(4), 361, 2004 より改変
歯科合併症の予防のため、口腔衛生を保つと共に定期的に歯科受診します。また、腎石灰化を合併する可能性があるため、水分摂取を心がけるよう、指導します。