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くる病※は、ビタミンDの作用不全やリン欠乏による類骨および成長軟骨の石灰化障害によりおこる病態の総称です。リン欠乏により低リン血性くる病・骨軟化症が発症し、ビタミンDの作用不全によりビタミンD欠乏症およびビタミンD依存症が発症します(図1)。
▲図1:くる病の分類
※:骨端線閉鎖前の小児期に発症したものは「くる病」、骨端線閉鎖後に発症したものは、「骨軟化症」とよばれています。
リン欠乏の原因は、①腎臓からのリン排泄亢進、②リンの摂取不足や消化管からの吸収低下、③骨・細胞内へのリンの移行があげられます(図2)。
▲図2:リン欠乏の原因
監修:大阪大学大学院医学系研究科 小児科学 教授 大薗恵一 先生
リン欠乏の原因によって各疾患に分類されており、このうち、家族性低リン血性くる病は腎臓からのリン排泄亢進により血中のリンが欠乏する疾患に該当します(表1)。
▼表1:各疾患における低リン血症の主な原因
1.腎臓でのリン排泄増加 |
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家族性低リン血性くる病・骨軟化症*(FGF23、PHEX、DMP1遺伝子の変異) |
高カルシウム尿症を伴う家族性低リン血性くる病・骨軟化症*(SLC34A3遺伝子の変異) |
尿細管機能障害(Fanconi症候群、Dent病など) |
原発性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD作用不足による二次性副甲状腺機能亢進症 |
腫瘍性骨軟化症 |
利尿薬、含糖酸化鉄注射剤 |
2.腸管からのリン吸収減少 |
食事摂取量の減少、低リン食 |
リン吸着薬(セベラマー塩酸塩、炭酸ランタン水和物) |
吸収不良、嘔吐、下痢 |
アルコール中毒 |
ビタミンD作用不足(ビタミンD欠乏症、ビタミンD依存症) |
3.骨・細胞内へのリン移行 |
未熟児くる病 |
糖尿病性ケトアシドーシス |
呼吸性アルカローシス |
インスリン、アドレナリン |
ハングリーボーン症候群 |
*:従来、原発性低リン血症性くる病・骨軟化症と呼ばれていた。
道上 敏美 : 臨床検査, 55(10), 993, 2011 より改変
家族性低リン血性くる病は、責任遺伝子の違いによっていくつかの病型に分けられます(表2)。これらの中で最も頻度が高いのはX連鎖性低リン血性くる病(XLH)です。また、高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血性くる病(HHRH)以外の病型では、FGF(線維芽細胞増殖因子:Fibroblast Growth Factor)23濃度の上昇が見られるため、これらを「FGF23関連低リン血性くる病・骨軟化症」と呼ぶこともあります。
▼表2:家族性低リン血性くる病の主な病型
FGF23濃度の上昇が見られる病型 | |
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X連鎖性低リン血性くる病(XLH) | PHEX遺伝子変異 |
常染色体優性低リン血性くる病(ADHR) | FGF23遺伝子変異 |
常染色体劣性低リン血性くる病1(ARHR1) | DMP1遺伝子変異 |
常染色体劣性低リン血性くる病2(ARHR2) | ENPP1遺伝子変異 |
歯の異常、異所性石灰化を伴う低リン血症性疾患 | FAM20C遺伝子変異 |
McCune-Albright症候群/線維性骨異形成症 | GNAS遺伝子変異 |
線状皮脂腺母斑(Linear nevus sebaceous)症候群 | HRAS、NRAS遺伝子変異 |
骨空洞性骨異形成症(Osteoglophonic dysplasia) | FGFR1遺伝子変異 |
FGF23濃度の上昇が見られない病型 | |
高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血性くる病(HHRH) | SLC34A3遺伝子変異 |
XLH : X-linked hypophosphatemic rickets
ADHR : autosomal dominant hypophosphatemic rickets
ARHR : autosomal recessive hypophosphatemic rickets
HHRH : hereditary hypophosphatemic rickets with hypercalcemia
木下祐加:CLINICAL CALCIUM, 26(2), 55-61, 2016より改変
「家族性低リン血性くる病」は、慢性疾患により長期の治療を必要とする児童の健全な育成をはかるため、医療費の自己負担の一部を助成する制度である「小児慢性特定疾病医療費助成制度」の対象疾患に該当します。 詳しくは、「低リン血性くる病ナビ(一般向け)」内の「医療費助成制度について」ページをご参照ください。