低リン血性くる病ナビ(患者さんとそのご家族の方向け)>P君のくる病解説>家族性低リン血性くる病について
低リン血症は生まれてから比較的すぐにみられることもありますが、さまざまな症状が出てくるのは1歳前後からといわれています。主な症状としてはO脚(図1)・X脚などの骨の変形、歩行開始の遅れ、転びやすいなどの歩行障害、低身長などがあります。また、歯膿瘍がしばしばみられます。
病院では、くる病かどうかを診断するためにさまざまな検査をします。
レントゲン検査で、関節部分が杯(さかずき)のような形になったり(図2)、毛羽立ったような状態がみられることがあります。
血液や尿中のリンなどの量を調べます。
家族性低リン血性くる病では、血液中のリン濃度が正常の値より低下するなどの特徴がみられます。その他にも活性型ビタミンDなどの濃度を調べることで、ビタミンDの作用不足が原因でおこるビタミンD欠乏症やビタミンD依存症と区別することができます。また、家族性低リン血性くる病では、尿中へ過剰にリンが排泄されるので、尿検査でリンの量や関連する検査値を測定してリンの排泄を調べます。
治療の基本は経口リン酸製剤と活性型ビタミンD製剤の併用
家族性低リン血性くる病は、現在根本治療がなく、血液中のリンを維持させることが主な治療法です。おくすりはリンを補充する経口リン酸製剤と体内へリンやカルシウムの吸収を促す活性型ビタミンD製剤を併用します。このおくすりの量は、患者さんの症状に合わせて血液中のリンやカルシウムの量がちょうどよくなるように調節されています。主治医の先生に指示されたおくすりの飲み方を守り、飲み方を変えないでください。特に成長期の間は、おくすりをやめると、くる病の症状が出てくることがあるので、治療を続けることが必要です。
定期的な検査値で投与量などを調節
治療中は副作用を最小限にするためにも、定期的に血液検査や尿検査をする必要があります。さらに、腎臓が石灰化していないかを調べるため、腎エコー検査を定期的に行います。これらの検査結果をもとにおくすりの投与量などを調節します。
現在の家族性低リン血性くる病に対する治療は根本的な治療ではないので、必ずしも十分な治療効果が得られるとは限らず、治療しても低身長に終わる患者さんもいます。また、成人後の治療方法は確立されていませんが、骨痛などの症状があれば治療を継続するのが望ましいとされています。
家族性低リン血性くる病の患者さんは虫歯、腎石灰化、二次性副甲状腺機能亢進症などの疾患を伴うことがあります。
虫歯
虫歯を予防するため、口の中は清潔に保ちましょう。また、定期的に歯科を受診します。
腎石灰化
経口リン酸製剤や活性型ビタミンD製剤を服用すると、リンやカルシウムからなる物質が腎臓に沈着する腎石灰化が起こることがあります。尿中のカルシウム濃度を濃くしないため、水分を摂るとよいといわれています。
二次性副甲状腺機能亢進症
経口リン酸製剤を服用すると二次性副甲状腺機能亢進症が起こることがあります。二次性副甲状腺機能亢進症を予防するため、血液検査の結果からおくすりの投与量を調節します。
治療中に高度の腎石灰化による腎不全をきたさなければ命にかかわる病気ではないといわれています。