低リン血性くる病ナビ 医療関係者向け

  • 家族性低リン血性くる病について
  • ホスリボンについて
  • O脚・X脚の患者さんが受診してきたら

くる病診察室

疾患・製品などに関するお問い合わせ

くる病診察室

低リン血性くる病・骨軟化症の診療について、専門医がわかりやすく解説していきます。

【治療編】家族性低リン血症性くる病の治療

本記事に掲載する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、すべての症例が同様な結果を示すわけではありません。

解説2 症例紹介 藤原誠、大薗恵一:小児内科, 45(9), 1687-1690, 2013より転載

症例 1歳11ヵ月 男児

主訴 O脚
経過
1歳頃から独歩をはじめたが、脚が曲がって歩き方がおかしいと気づかれていた。近医を受診しX線所見からくる病を疑われ、精査目的で1歳5ヵ月時に当科紹介受診。血液検査にて低リン・低カルシウム血症と高ALP血症がみられ、また尿中リン排泄亢進が認められた。活性化ビタミンDを開始した後も低リン血症は持続し、血清FGF23高値であることが確認された。
家族歴
父親が幼少時よりくる病を指摘され、成人までリン製剤を内服していた。
現症
身長72.3cm(-2.27SD)、体重9.6kg、肥満度+11.4%、鼻根部やや平坦、大泉門閉鎖、歯5本、胸腹部異常なし、O脚(膝間2.5cm、内顆上2.2cm)
検査
  • X線検査:上下肢長幹骨遠位骨幹端の軽度さかずき様変形、毛羽立ち
  • 血液・尿検査(活性化ビタミンD開始前):
    血清Ca 9.6mg/dL、P 3.5mg/dL、ALP 1779U/L、Alb 4.6g/dL、Cr 0.20mg/dL、PTH 92.5pg/mL、1,25(OH)2D 35pg/mL、FGF23 78pg/mL
    尿Ca 0.8mg/dL、P 62mg/dL、Cr 20mg/dL、%TRP 82.3%、TmP/GFR 2.9mg/dL
治療
本症例は1歳児であり、血清リン濃度が3mg/dL台でも低値であることに留意する必要がある。家族歴、低リン血症および%TRPの低下があることから当初から遺伝性低リン血症性くる病が疑われたが、ビタミンD欠乏の合併も考え、活性型ビタミンD補充を開始した。その後、高ALP血症および低カルシウム血症の改善は得たが、低リン血症は持続し、血清FGF23高値が確認されたことから遺伝性低リン血症性くる病と診断した。リン製剤の併用を開始し、血清リン値の改善が得られた。

参考文献
1)藤原 誠、大薗恵一:小児内科, 45(9), 1687-1690, 2013

Dr’s Comment

Dr’s Comment  家族性低リン血症性くる病に対する薬物治療は、経口リン酸製剤と活性型ビタミンD製剤の併用が基本となります。リン酸製剤は、リン酸として10〜30 mg/kg/日程度を分4で投与し、くる病の病勢を反映する所見(骨X線画像所見や血清ALP値等)の改善を目標とします。リン過剰を避けるため、血清リン値の正常化を目標とせず、リン負荷に反応して上昇する血清PTHが正常の2倍以上にはならないように投与量を調節します。活性型ビタミンD製剤の併用はリン値の補正と安定が目的ですが、尿へのカルシウム排泄増加もきたし腎石灰化のリスクとなりうるため、尿中Ca/Cr値の測定や腎エコーによるモニタリングが必要です。重症例では外科的治療が必要となることもありますが、一般的に薬物治療で症状は改善します。
 なお、ビタミンD欠乏症として治療を開始したが改善がみられず、低リン血症性くる病と診断されるケースもみられます。診断編でご紹介した「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」などを参考に鑑別を行い、適切な治療を行っていただきたいと思います。

ページトップへ